GMS5搭載VISSR可視画像センサの問題点と補正

門崎 学・菊地 時夫(高知大・理)

1.はじめに

 GMS5が捉えた可視画像には、様々な用途がある。その中には、輝度の微小な違いから検出しなければならない観測も含まれる。現在、GMS5が送信してくる可視画像データには、走査線ごとに輝度が明らかに違う不自然なものが見られる。また、朝夕は太陽光線の入射が少ないため、極端に暗く写るので雲や地形の識別は一層難しくなる。このようなセンサの問題について検証したという報告はあまり見あたらない。そこで本研究は実際に、GMS5から送られてきたS-VISSRデータを解析し、その補正を試みた。

2.データ

 可視センサは4つの検出素子で構成され、衛星が1回自転する間に上下(南北)4ラインを同時に走査する。画像は黒(0)〜白(63)の64階調モノクロームである。  画像データは東京大学生産技術研究所で受信され、可視・赤外に分割したものを使用した。可視画像データは全84,418,560bytesあり、通常は必要な領域のデータを切り出し、衛星姿勢補正や幾何補正等の処理を施した後に使用する。しかし、今回は上記の補正を行う前のデータを対象に解析した。観測年月日および日時の異なるいくつかのデータで解析を試みたが、本稿では一つの例にとどめる。  グラフ1に4つの各検出素子で読み取られた輝度レベルごとの出現数を示す。ただし、黒(0)は宇宙空間の値で、厖大な出現数となるため、グラフから除いた。  解析したどのデータも、同一検出素子において、いくつかの決まった輝度が出現していない。更にその決まった輝度の前後のレベルはピークとなっている。したがって、出現数が0である輝度は、その前後のレベルにずれていると考えられる。また、輝度レベルが1〜10のとき、各検出素子とも出現数が0である輝度が多い。故に薄暗い画像の質は著しく落ちる。画像1にグラフ1で使用したデータのオリジナル画像を示す。

3.補正

 オリジナルデータから順に画素を取り出す。その輝度が出現数0の輝度の前後に位置する場合、補正対象画素としてその画素を含めた周囲13画素(図1)を比較する。その差が小さく、異常と判断できたら、周りの輝度レベルを参照し、適正値を代入する。この処理では、画像の質を保持し、気象要素等を壊さず補正することに重点を置いた。また、データが大きいため、未処理データを取り込んだら同時並列的に補正し、処理済みデータを順次バッファから吐き出すパイプライン処理を使用した。

4.結果

 補正後の輝度の出現数をグラフ2に示す。出現数が0だった輝度は、周囲の値を参照することで適正化され、元から正常だった値を変えずに補正対象輝度のみの処理ができた。補正後の画像を画像2に示す。雲などの要素を崩さず、見えなかった海岸線の地形が現れている。この補正は、高解像度の解析が必要な場合には有効であることがわかった。

 謝辞.GMS受信システムとデータベースの運用に携わっている東大生研の根本利弘氏に感謝いたします。

 グラフ1   グラフ2

 画像1   画像2

 図1 参照画素